お前みたいな奴、会った事ねぇぞ?

 

Boys Talk 3

 「・・・・なあ?お前さ・・・オトコとして、それって、どうよ?」

 

 頬杖をつきながら凄まじく呆れましたと言わんばかりのギップルは、目の前に座る黄金の髪の青年へ問いかける。
 『ちょっといい物を仕入れたから遊びにこい』とジョゼまで彼を呼び出したのはいいが、当の本人は『いい物』よりも『食べ物に夢中』といった感じで、先ほどから用意された食事をパクパクと実に美味そうに食べ続けているだけだ。

 「は?どうも何も、興味ないんだからしょうがないだろ?」

 青年はあっさりと切り返すと再び料理の乗った皿へと集中する。

 「『興味がない』ってこたぁないだろ?!お前だって嫌いじゃないだろ?え?ティーダ?!」

 ギップルが思わず叫んで指差した方向にはマキナに囲まれるように置かれた一つのスフィア。
 彼の言うところの『ちょっといい物』とはコレのことだったのだが、その内容はといえば『健全な男子諸君が涙を流して喜んでしまう』生つばものの『一部にとってはお宝』スフィアだったのだ。

 砂漠発掘要員から密かに手渡されたそのスフィアにいたく感動したギップルは、いの一番に!と多忙を極めるこの青年へ連絡を取ったのだった。

 

 

 それなのに。

 

 

 彼が到着し、丁重に部屋へ招きいれ、『いざ秘密上映会』とばかりにスフィアのスイッチを入れたその瞬間、かの人は『腹がへった』などとぬかすではないか。
 いたしかたなく適当に食べ物を用意させ、今度こそとスフィアを起動させたギップルの目に飛び込んできたのは、平然とその映像を見ながら食事を取るティーダの姿だった。

 呆れてものも言えないとは、まさにこのことか・・・と改めて思う。

 正直、『恋人一筋』な奴がこの映像を見た瞬間、一体どんな顔をするのか見てみたかった。
 以前自分へ『愛する人にしか身体が反応しないのだ』と言い切った男が、どうなるか。それを想像するだけで楽しくて眠れなかったというのに、これでは肩透かしもいいところだ。

 大体、いかに興味がないとはいえ そこは同じ男。
 『あんな映像』を目の当たりにすれば、それこそ純情一直線、頬を赤らめるくらいはするだろう。
 慌てふためく『伝説のガード様』を拝ませてもらいましょうなどという淡い期待は、彼の食欲の前にこっぱ微塵に打ち砕かれたのだった。

 「あー、腹いっぱい。ごっそーさん!」

 律儀にも食後の礼をして微笑んでいる彼へギップルは諦めたようにそんざいに頷いてみせると、傍らに広がるマキナの山を乱暴にどかし、その場に寝転がる。

 「しかしお前さ、アレ見ながら喰うなよ・・・。オレが気持ちが悪くなるじゃねぇか」

 せめてもと繰り出されたささやかな抗議にティーダは盛大に笑ってみせる。

 確かに、あのスフィアの内容は決して『キライ』なものではない。むしろ『魅力的』と言っても過言ではないくらいの映像だったと、思う。
 ・・・『思う』のだ。
 その感想はあくまで『男』としての自分が素直にそう述べているだけで、見てどうなるかといえば、『どうにもならない』が正解だ。
 なにも感じないわけだから必然的に勝ってくるのは『食欲』なわけで、その欲求に従いつつ目の前で映し出された映像を見ていた自分に、まさかそこまで呆れられるとは思わなかったというのがティーダの本音だったから。

 「だからさ、言っただろ?ユウナじゃなきゃダメなんだって!」

 笑い続けて息も切れ切れにそう言うティーダに、ギップルが凄まじく嫌そうに顔を顰めた。
 目の前に座るこの青年に何度当たって行っても勝てたためしがないのだ。
 勝ち負けを競っての付き合いではないけれど、一度くらいは『伝説のガード』を打ち負かしたい。
 その割には毎回子供じみた作戦ばかりというのが玉に瑕なのだが・・・。

 「真面目に、ユウナ様出ないと起たねぇの?」

 「そおッスねえ」

 ギップルの直球な質問にくすくすと笑いながらティーダが答える。

 「そんなにイイのか?!」

 「それ、セクハラ。」

 勢いで答えるかと思えばそうでもない。

 「は〜〜〜〜!俺にはわからないねぇ〜」

 「そのうちわかるって」

 降参とばかりに大きなため息をつきながら天を仰いだギップルへティーダは艶然と微笑むと、すぐ傍で転がっている『例のスフィア』を手に取りそれをズボンのポケットにしまいみ立ち上がった。

 「うわ!何する気だ?!」

 まさに『今から帰ります』という動作のティーダに慌ててギップルが追いすがると、全戦全勝の伝説のガード様はそれこそ凄まじく意地の悪い笑みを口元に浮かべて勝ち誇ったように言い放った。

 

 

「スフィアハンターカモメ団!お宝スフィアはいただくッス!」

 

 

 あまりな展開に唖然として固まっているマキナ派のリーダーにティーダは大爆笑しながら近寄ると、『そうそう、お礼はしないとね』などとうそぶいてギップルの耳元へ顔を寄せ、低い声で囁いた。

 

 

 

 「オレさ、ユウナのね、『声』だけでイケるッスよ?」

 

 

 

 ひらひらと手を振って部屋を出て行くティーダの後姿に、今回もやっぱり勝てなかったと痛感せざるを得ないギップルは扉が閉じた瞬間凄まじい勢いで笑い出したのだった。

fin

シリーズ化しつつあるギップル×ティーダです。(笑)
お宝の内容はモチロン、『アダルトスフィア』でございます。(爆笑)
きっとそんなものだってあるだろうと・・・!

うちの太陽様は反応しませんけど!メシ喰っちゃう。

あのスフィア・・・あの後どうなるんでしょうかねえ?

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