夏はいいなあ、うん。

 

Boys Talk5

 

 ジリジリと照りつける太陽。

 視界いっぱいに広がる青い海。

 寄せては返す波は穏やかで、いつまででも眺めていられそう。

 

 「おう」

 パラソルの下、ささやかに出来た日陰にごろりと寝転がった眼帯を装着した青年が、隣に座る人物へ声をかける。

 「なんスか?」

 呼びかけた方も言葉少ないなら、返事をする方も一言だ。

 「お前も泳いでこいよ」

 「嫌ッスよ。それでなくてもこれから毎日嫌ってほどここで泳がされるっつーのに・・・そっちこそ泳いできたらどうッスか?」

 そこでようやくお互いの視線を合わせ、小さく笑う。

 

 「なんだな、おい。いい眺めだなあ」

 「いい眺めッスねえ」

 『いい眺め』と銘打たれた視線の先には水着姿も眩しいユウナたちの戯れる姿。
 まあ、その絵の中に若干名邪魔な存在も居ないでもないが、それもまあ女性陣の愛らしさにヨシとする。

 

 夏も終わろうかというこの時期。

 『今年は海で泳いでいない!』と叫んだリュックが、今期リーグも無事終了し晴れてオフシーズンへと突入したティーダを引きつれビサイドの海へやってきたのはつい今しがたのこと。

 リーグ終了のレセプション会場へやって来ていたギップルも面白がってついて来たのだ。

 『俺も泳ぎてぇなあ』

 などと言っていたが、浜へ出てからずっとこうしているところを見ると下心満載であるというのがバレバレだ。

 

 「アレは放っといてもいいのか?」

 『アレ』をなんとなく指差したギップルにティーダは笑顔で『大丈夫』と答える。

 今まさに愛らしい水着姿のユウナへ飛び掛らんとジャンプしたアニキを、それは素晴らしい回し蹴りをもってしてリュックが排除したのだ。

 「・・・なるほどな」

 呆れながらも妙に納得しているギップルにティーダはクスクスと笑いながら誇らしげに宣言する。

 「なんてったって伝説のガード様がご一緒に遊ばれてますから」

 ユウナの貞操を守ってくれるのにあれ以上の適任は居ないだろう。
 なんてったってあの元気印は、己のことよりまず、ユウナ様なのだ。

 隣に座る、同じく『ユウナ様バカ』なこの青年とは『バカ』つながりで非常にウマが合うらしく、お互い妙な信頼関係が築きあがりつつある。
 ユウナ様を巡るこの2人の『阿吽の呼吸』は一体どうなっているのだと呆れを通り越して感動さえしてしまう時もしばしばだ。

 

 「で?どっち見てるッスか?」

 意地の悪い笑みを口の端に乗せたティーダがギップルの顔を覗き込む。

 この男がこういう笑顔をしている時は最強に根性が悪い。

 「ユウナ様だって言ったら?」

 「別にぃ?だってユウナ殺人的に可愛いもん。しょうがないッスねぇ」

 意地悪く切り返すもまったく反応してこない。

 ギップルは内心では苦虫を噛み潰したような心もちになりながらも、表では平静を装い『パイン先生も居れば言うことナシだったんだけどな〜』などと嘯いた。

 『夏が終わる前に海水浴を!』と張り切るリュックに呆れながらも同行しようとしたパインを、ギップルと同じくレセプション会場に来ていたバラライが引きとめたのだ。

 バラライは体面上『アカギの記録整理の手伝いを』などと言っていたが、不器用な彼の精一杯のがんばりに敬意を表した『バカ同盟』は喜び勇んでパインを『置いてきた』のである。
 あのパインに、有無を言わさず、凄まじいイキオイでコトを展開する2人の行動力には大爆笑させられたのだが・・・。

 

 「まあ、いくら見慣れてるといえ、水着姿ではしゃいでるところは可愛いッスねぇ」

 根性悪は逸らしても逸らしても本題に引き戻す。

 「お前は相変わらず根性悪ィなあ!」

 「あ、それ心外。オレこんなに素直なのに」

 細められた青の瞳は凄まじく愉快そうで、なんでも見通されているようで複雑ではあるけれど、ついつられて笑ってしまう。

 「よく言う・・・」

 笑い合う下心満載な男2人の耳に元気印の声が響いた。

 

 「こらー!!せっかく泳ぎに来たんだからチィもこおーい!!」

 「オレ一昨日まで試合してたっつーの!!」

 

 大声でそう言い返しながらもリュックの召喚に答えるらしいブリッツ界のスター様は勢いをつけて立ち上がる。

 今にも駆け出していきそうな小麦色の背中へギップルはパラソルの影から見上げつつ声をかけた。

 

 「あんまり触るんじゃねーぞ」

 

 一瞬動きが止まりゆっくりと振り返ったティーダの青の瞳はこれ以上はないというくらいに見開かれていたが、それも一瞬のことですぐに意地の悪そうな光を湛え細められた。

 「ギップル」

 「ああ?」

 「痕、本人が知らないうちに見えるところに付けるの、反則」

 自らの項を指差したティーダがにやりと笑う。

 「・・・・・・っお前の目は幾つ付いてんのか教えろ!!」

 大爆笑しながら走り去るティーダの背中に思わず叫んだギップルは、慌てて飛び起きてその後を追いかけたのだった。

fin

 

Boys Talk番外編です。(爆笑)

歳相応の彼らがじゃれるところが描けていたらいいんですけど(苦笑)
なんとなくギプリュです。(笑)

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