やっぱり基本だろ?
Boys Talk 6
目下のところギップルの好奇心は、毎月ではないにしろ、大体決まった時期にやってくる客人に向けられているといっても過言ではないかもしれない。
ある日突然通信スフィアで連絡をよこす彼(か)の人は、きっちり1週間発掘の仕事をバリバリとこなして帰っていく。当初、皆目検討もつかなかったその一定の周期は何からきているのかと尋ねたことがある。
そんな当たり前とも言えるギップルの素朴な疑問に、ティーダは澄んだ青の瞳を悪戯っぽい光で輝かせて臆面もなく『彼女と出来ない時期だから』と、のたまったのだ。
いつでもどこでも一緒にいる。
そんなイメージが定着して、尚且つ『当たり前』の『あの2人』が別行動をとっていることも不思議なことの一つだったのだが、『一緒にいたら絶対に困らせる自信がある』と言い切った青年を見て思わず大爆笑したのはいつだったか。
奴曰く、
『有り余る性欲を肉体労働に向け、ご褒美でユウナと豪遊』
だそうだ。
『ユウナ様バカ』には先だってもう一人思い当たる人間がいるが、まさかアレの上をいくほどの『バカ』が登場するとは予想だにしていなかった。
マキナ派としてもこの客人は願ってもない逸材で、労働報酬にしても今まで雇った人間とは格段に違う扱いをとっている。
その代わりといってはなんだけれど、広大な砂漠の中、特に危険な地域を中心に働いてもらうのだが、これが予想以上によく働くのだ。
一人で放り出しても大丈夫。
一度様子を見に行った際、あの馬鹿でかいズーを相手に凄まじく楽しげに剣を振るっていたところを目撃した時などは、さすがの自分も言葉をなくした。むしろ悔しくなって一緒になって発掘に没頭したほどだ。
そして、改めて思う。
この男は『伝説のガード』その人なのだと。
『伝説のガード』と呼ばれていた男に過去一度だけ逢ったことがある。
それもビーカネル砂漠の只中で、だ。
あの時は妙に緊張した。
口調こそアケスケに、いつも通りのものだったけれど。
ただそこに立って言の葉を紡ぐ、それだけのことだというのに、目の前にいる『伝説のガード』その人から溢れ出るオーラのようなものが自分を凄まじく圧倒したのだ。
今振り返るならば唯一つ。
感動した。
これがシンを倒した男かと。
嫉妬も覚えた。
何かをしたくても出来ない『今』に。
「しかしよ、お前にはそういう神々しさの欠片もねぇな」
少々うんざり気味といった感のギップルがボウガンを構えながら隣に立つ青年へぼやく。
「うん?ないッスか?こう、スターの輝きっつーの?」
ぼやかれた青年は、水を象ったような美しい剣をすらりと引き抜いて愉快そうに笑う。
「ないない」
「あるっつーの!」
その掛け合いが合図だったかのように青年が黄金の髪を揺らし前方へ向かって駆け出した。
視線の先には見え隠れするエルダードレイクの姿。
駆け寄るギップル達の姿を捕捉し、威嚇の咆哮を轟かせてる。「ティーダ!屈め!!」
ランチャーを構え前方へ発射すれば、ギリギリのところでそれをかわしたティーダが剣を構えて踊り出る。
「ギップル!てめ!当たってたらどーすんだ!!」
一撃一撃は軽そうに見えて、実は確実に急所を突いているのであろうティーダから抗議の声が飛んできた。
この期に及んで文句を言えるくらいに余裕があるのか、と妙に感心し、ギップルは笑い声をもってして返事としたのだった。
「も、もっと早く言えっつーの。今度こそ当たる、それ!!」
あの強敵を『さっさと片付け』ギップルの元に歩いてきた伝説のガード様は、その素直すぎるとも思える表情をご不満色に染めブツブツと文句を言い続けている。
「避けるじゃねぇか」
「避けますけどね。大体なんでギップルと2人でベベル地下にもぐらにゃならないんスか?」
どさり、とその場に座り込んで休憩を決め込むティーダにギップルは悪びれる様子もなくしれっと言い放った。
「興味あるだろ、普通さ。伝説のガード様は一体どのように戦われるのかなー、なんてな」
「暇つぶしとかって言わない?それ」
呆れるティーダをよそに、ギップルは内心密かに『あながち嘘でもないんだけど』と思う。
今、隣に座り会話している青年が、確かに『伝説のガード』と呼ばれる人で、その力もさすが、と思わざるを得ないのも熟知してはいる。
けれど、その『力』を目の当たりにしてみたい、という欲求が日に日に膨れ上がっていたのも事実で、その好奇心に耐え切れなくなってきたそんな時、おあつらえ向きにも1週間の禁欲生活をやり過ごすべくティーダが目の前に登場したのだ。そしてギップルは嬉々としてティーダをベベルまで引き連れて行き、今に至るのである。
もちろん、砂漠で得られるはずだった報酬はキッチリ払うと約束をして・・・。
「しかし、オーラの欠片もねぇな、お前は」
結局はそこに立ち戻るのだが、少しだけ悔しいと思っているなどというのは口が裂けても言えないと心に誓う。
「オーラねえ。だからあるっつーの。大スターの輝きが」
「『大スター』って自分で言うか?」
「言う言う。最近リュックも言ってくれなくなったから」
先ほどまでの戦闘で見せていた顔とはまったく違うその柔らかい微笑みにつられ、ギップルも笑顔になる。
「飯でも喰うか?バラライが用意してるらしいぞ」
「喰う!」
先を歩くティーダの背中を見ながら、それでもまだ当分自分の中の好奇心はこの男へ集中するのだろうとギップルは小さく苦笑したのだった。
fin
Boys Talkも早6作目です。(笑)
書けば書くほどギップルはティーダスキーなのね!!と思ってしまいます。(爆笑)
でも、男の子同士で遊ばせるのも好きです。
ティーダがやんちゃで。(笑)