まあ、素朴な疑問っていうやつ?

 

Boys Talk7

 

 「ところでよ、お前ってば『あの時』はどうだったわけよ?」

 久しぶりの酒の席。
 久しぶりにつき合わす顔。
 さて、今日は一体何をどう切り出してくるのかと思えばやっぱりそういう話になるわけで。

 「どうって、なにが『どう』ッスか」

 「なにがって、そりゃあ稀代の性欲魔人がよくもまあ我慢しなすったと感心してるんじゃねぇかよ」

 『性欲魔人』。
 まったくもってこの男は自分のことを棚に上げて、よくもまぁしゃあしゃあと言うものだ、とティーダは心の中で苦笑する。

 「あのね、別に四六時中さかってるわけじゃないッスよ?」

 「いや、さかってるって」

 「自分こそ最近もお盛んのようで〜」

 男2人はそこまで言い合ってから顔を見合わせ『くくく』と笑い合うと、今日ジョゼまで呼び出される『言い訳』に使われた『ちょっと珍しい酒』を手に取り酌み交わした。

 「っていうかな、お前酒飲みながら甘いもんとか平気で食うな。気分悪いわ」

 相手の酒のつまみに顔を顰めるのはマキナ派の若きリーダーその人で

 「別に一緒に喰えって言ってないッスよ」

 チョコレートを口へ放り込みながら笑うのはブリッツボール界の大スター

 「ああ、ギップルが喰わないんならユウナ達に土産で持って帰っていいよな」

 本当に胸焼けをおこしていそうな顔でヒラヒラと右手を振ってみせる悪友の姿に、ティーダは『了承』の意を汲み取り手近に置いてあった袋へ菓子類を仕舞いだした。

 「それにしても、毎回毎回、なんだってそう宿題みたいにイロイロ聞くかなあ」

 「そりゃあお前がナゾの男だからだろ?」

 

 

 ナゾの男。

 突然現れてたちまちスピラ中の人気者となって。

 しかも『あの』ユウナ様の想い人。

 『あの時』の戦いではガードとして同行していたというではないか。

 しかも、その折も、やはり今回と同じように突然このスピラに現れて・・・。

 シューインに良く似た、けれどまったくの別人の・・・。

 

 

 「そりゃあさ、ユウナに何もしないで平気だったかーって聞かれたら『平気だった』とは言えないっスよ」

 酔わせてみようと思っても、バカみたいに酒に強くて

 「あの時からそりゃあもう可愛かったッスからねえ」

 頭の隅っこでチラリと浮かぶのは幼なじみのアルベドの少女。
 似てる。
 言動が似すぎてる。
 とにかく『ユウナが一番』と言って憚らないところなどは兄妹みたいにソックリだ。

 「相変わらずユウナ様バカで」

 呆れて言ったその一言も嬉しげに頷かれては二の句も告げないではないか。

 素直で、明るくて、思ったことはすぐに口にするし、行動する。

 その原動力の中心には必ずユウナの笑顔があって、臆面もなく愛を囁くその姿に最初は呆れもしたけれど、今では尊敬すらしているかもしれない。

 それに、何より楽しいのは、やはり同世代の男同士というのが大きな要因だともギップルは密かに思う。

 マキナ派の中にも同世代の男など腐るほどいるし、それなりにバカみたいな話で盛り上がったりも出来るけれど、それ以前にどうしても『マキナ派のリーダー』という責任がついてまわるだけにイマイチはじけきれないでいるのも事実。
 かといって、あのベベルにいる、妙に清々しい実は腹黒いバラライと遊ぶかっていうと、それは『ごめんなさい』とお断りもしたい。

 出逢って、話して、疑問がたくさん生まれて、追求して、そして笑って。

 まったくの畑違い。

 凄まじくナゾだらけ。

 こんな愉快な男はそうそういたものじゃないぞ、と本人に向かって大笑いをかましたら、つられて笑いやがったから更に好感度は上がったのだ。

 

 

 「ああ!わかった!じゃあな、アレだ!」

 突然の己のひらめきにギップルが嬉しそうに膝を叩いた。

 「なんスか!」

 『今までこの男にはスッキリと勝てたためしがないけれど、これは少しばかり自信があるぞ』・・・そんな笑みを満面に乗せたギップルの口から発せられたのは・・・

 

 

 「一晩で最高何回だ?!」

 

 

 愉快な質問にティーダの笑顔。

 身を乗り出して自分の答えを待つギップルの顔は勝つ気マンマンで、気を抜けば口に含んだ美酒を吹き出してしまいそう。

 人のことをとやかく言える立場ではないけれど、この悪友殿も相当な負けず嫌いでいっそ好ましい。

 「聞いたらヘコむから言わない」

 必死で美酒を飲み込み解放された喉から出るのは控えめな笑い声。

 「マジでか?!」

 「マジ」

 気になることはとことんまで追求するのがアルベド人特有のものだとわかっていながら、こうしてはぐらかしてみせるのは楽しいから。

 甘いものも辛いものも、酒のつまみに好きだけど、愛しい少女以外とこうして酌み交わすのなら『馬鹿な話』が一番美味い。

 

 「ぬがー!おまっ!気になるだろー!くそー!!」

 

 悲痛なその叫び声はティーダの大爆笑に飲み込まれて、翌朝、帰りがけに『答え』を教えてもらったギップルは、やっぱりいつも通り『負け』を認めざるを得なかったのだった。

 

fin

 

全然『旅の途中』の話でないんですけど、すみません。(苦笑)
いや、旅の途中あの性欲魔人は果たして我慢できたのか?!おい!!とマキナ派のリーダー様がやいやい言うので、そこのところどうなのですか?太陽様、とお伺いした次第です。(笑)

・・・え?一晩に何回かって?
企業秘密にしておきます。(^^)

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