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 あんまり深くは考えたことないんだ。

      だって、それは ごく当たり前のことだから。

 

    理由。

 

 「なあ、アンタどうしてそんなに『あの人』のことが好きなわけ?」

 

 唐突で不躾な質問に、ティーダは一瞬どうしていいのかわからなくなる。

 飛空艇セルシウス。
 だいぶ遅れて入った『気に入ってるけど、気にくわない新入り』にあてがわれた一室へ、突然現れた来客の直球な問いかけだった。
 片方の瞳を眼帯で覆った青年、ギップルは戸口へもたれるようにして立ったまま、『新入り』であるところのティーダを面白そうに見つめている。

 「『あの人』って、ユウナのことッスか?」

 ティーダは右手で弄んでいたブリッツボールを足元へ置くと、若きマキナ派のリーダーを部屋へ招き入れた。
 一応、自室へ招く姿勢はとりつつも、あからさまに呆れたような表情をこちらへ向けている悪友のことなど気にも留めないギップルは、笑うでもない微妙なその表情を崩さぬまま、

「そう、ユウナ様」

とだけ言うと、どかどかと侵入してきて部屋をきょろきょろと観察しだした。

 興味のあることに対しては素直で貪欲なアルベド族らしい、とティーダは内心苦笑する。

 シン討伐の折、一緒に戦った中にもアルベドの少女がいたが、彼女の飽くなき探究心とその根性には感心を通り越して平伏したものだ。
 そして、まわりくどい事もしない。
 だから、一見不躾で乱暴な表現であっても、そこに悪意がないのがわかっているだけに 不快感というよりも『どう答えたものか』と悩んでしまうのだ。

 「座ったら?」

 いまだ立ちっぱなしのギップルに1脚しかないイスを勧める。
 広い飛空艇と言えども、個々にあてがわれている部屋はあまり大きなものではなく、ティーダの部屋に至っては 大半がベットで占められており、開いたスペースに小さなテーブルとイスが置かれ、その隙間を埋めるように私物(主にブリッツ関係)が配置されていた。

 「おう、サンキュ」

 ここでようやく笑顔を見せたギップルがイスへ収まる。
 ティーダもそれに向かい合うようにしてベットへ腰掛けると、腕組みをして考え出した。

 

 「・・・・・・・どうしてって・・・・・・考えたこともないッスよ」

 「はあ?なんでわかんねぇんだよ」

 

 待ち焦がれた返事に不満の色が隠せないというギップルに、思わず苦笑する。
 そう、考えたこともないのだ。

 いつからユウナのことを好きになったとか

 どれだけユウナのことが好きなのか、とか。

 初めて彼女を見た瞬間から、とも言えるし

 もう、めぐり会う以前から好きだったとも言えそうだ。

 今の自分の『ユウナへ対する気持ち』を考えると『真面目に答える』のが馬鹿馬鹿しく思えるほど、どうしようもなく彼女に溺れている自分がいる。
 そう。
 我が身が消えて無くなったとしても、守りたかった愛しい人。
 結果的にもの凄く泣かせてしまったけれど、あの時の自分の選択は今でも後悔してはいない。

「そっちこそ、いないんスか?」

「大切な人・・・ねえ・・・」

 わざわざ質問にやってきたのに、逆に質問されて今度はギップルが考える番になってしまった。

 「あんまり深く考えたことねぇなあ」

 強いて言えば、仲間かな?と笑うギップルに、ティーダは親しみを感じずにはいられない。

 

 どう説明したらいいだろう?

 到底説明できるような感情ではないというのに。

 

 しかし、目の前の男は自分が納得する答えが出されるまで動きそうもない。
 言葉で表現するには大きすぎる自分の感情を、どう理解しろと言えるだろうか?

 「好きなもんは好きなんだからなー。どうしてって聞かれても・・・・・」

 困り果てたティーダはベットへ仰向けに寝転がる。
 もう見慣れた天井を見つめ、愛しい人の顔を思い浮かべたその時、理由として納得させるに至極簡潔で素晴らしい答えがひらめいた。

 「ああ、そっか」

 ぽつりと呟くと勢いよく起き上がり、ティーダは勝ち誇ったような表情でギップルを覗き込むと 次に繰り出された一言をもってして、アルベドの青年を一瞬で納得させてしまったのだった。

 

 

 「やー。参った、参った。」

 居住区でくつろぐ女性陣へ向かって、大きな声をあげてギップルが登場する。

 「なによ、ギップル。どうしたのさ?」

 わざとらしく『参った』と連発するギップルに、リュックが駆け寄って問いかけると、盛大に笑み崩れたマキナ派の若きリーダーはグリグリと旧友の妹の頭をかき回した。

 「もー!!なんなのよー!!」

 怒れるリュックにおかまいなしの彼は、カウンター越しにマスターへアルコールを注文する。
 そして、その隣で美味しそうに紅茶を飲んでいるユウナに小さく耳打ちをした。

 最初はなんのことやらわからない といった様子のユウナの顔が、みるみる赤くなったかと思うと急に走ってエレベーターの中へ消えてしまった。
 行く先は、きっと『彼』の部屋。

 「一体何事だ?」

 少し呆れ顔のパインは、薄々ティーダが絡んでいるであろうことは看破している。
 『参った』と言いながらもやけに嬉しそうなギップルは、マスターから酒を受け取ると豪快に笑ってこう言った。

 

 「アイツさ、ユウナ様相手じゃないと 出来ないんだってさ。いやー参った参ったー。」

 「ザカカーーーーーッ!!」

 

 豪快に笑うマキナ派のリーダーは、次の瞬間リュックによってそれ以上に豪快に殴られたのは、いうまでもなし。

fin

 

男同士の会話です。(笑)
初めてギップル・・・。ちゃんとギップルかな・・・・・。(滝汗)
聞いてもしょうがないし、聞かれてもしょうがない。(笑)
それでも疑問に思ったら、聞いてしまいそうだったので。あはは。

ティーダ君、1本。というところでしょうか?(苦笑)

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