出会ってもう何年?

 2人のことをよくよく知っている友人知人は口をそろえてそんな風に言うのだ。
 これは所謂「褒め言葉」の類ではなく、「呆れて」総評されているに違いない。
 そんな時決まってこう言ってやるのだ。「どうだ羨ましいだろう」」と。

 

  ベイビィ

 

 「あの、ね?えっと、まだ、する・・・の?」

 遠慮がちに投げかけられたその問いかけに対しての答えは「イエス」だ。そうして間髪おかずにユウナの可愛らしげな唇に己をそれを重ねる。
 真面目な彼女は、スタープレーヤーのシーズン開幕スタジアム入りの時間に気をとられっぱなしのようだ。
 残念ながら、ユウナが「そう」なれば「そう」なるほど意地悪をしたくなる時だってある。
 
自分でも呆れるほどに彼女に溺れているのだ。
 「まだするのか?」などと問われたなら、「まだし足りない」と答えることだってやぶさかでないし嘘偽りの無い本心だ、。
 ただ、そう答えたら他でもない愛しい彼女がとんでもなく困るだろうから黙っているだけのこと。そんなのっぴきならない状況にまで陥ってるという現状を把握できていないだけ。それは致し方ないことだ。何故なら、精一杯の虚勢でもって覆い隠して生活してるからである。

 許されるなら、ずっとユウナと「こう」していたい。

 視線が合えばキスをして、微笑み合ってはキスをする。

 キセキの復活劇だったと口々に言った友人知人その他モロモロは、それでもこんな風な2人の熱は、高温のままに続くなどとは夢にも思っていなかったことだろう。
 その実、自分だって想像していなかった。
 こんな、目が合っただけでキスをしたい欲求に悶絶し続ける自分のことなど。

 

 「も、もう、スタジアムに行かないと・・・っん!」

 「うん、もう行くけど、ユウナ、かわい。もう一回」

 「みんな待って・・・んぅ」

 

 桜色の唇を有無を言わせず奪っておいて、どの口がそんな事を、と少しだけこそばゆい。

 熱い吐息も潤んだ瞳も。

 

 ユウナ様。

 皆にはそうなんだろうけど、今は自分だけのもの。

 恥ずかしい独占欲も、優越感も、何もかもを全部帳消しにしてくれるのがキス、と勝手に決め付けて彼女を時折困らせる。

 

 

 ついばむようなキス。

 確認しあうようなキス。

 あの時の、キス。

 

 

 毎日そんな風に困らせたり溺れたり優越感に浸ったり、時には幸せに眩暈を覚えたりしながらのこの何年。
 身の内に抱えた熱は冷めることなく今もある。あの時の自分は良くやったと褒めてあげたいほどの壊れっぷりなのも重々承知。

 これまでもそうだったように、これからもきっと変わらない。

 

 「・・・っか、帰ってきたら、続き、しよ?」

 

 困らせて追い詰めて、彼女の口からそう言わせるように。

 

 「じゃあ、もう一回」

 

 甘い囁きにもたらされるのは、それ以上に甘美な桜色の唇だった。

 

fin

 間に合いませんでしたが(笑)FF10発売8周年おめでとうありがとう!

 おめでとう、というよりも私には「ありがとう」の方がウエイトが大きいです。(^^)

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