そんなつもりで言ったわけじゃなかったのに〜。
ハッピーバレンタイン!
大好きな人に贈り物をする。
それってなんて素敵なことだろうと子供の頃密かに感動した。
大好きな人のことを一心に想い、そしてその人のために『何か』を用意するあの時間が、どうしようもなく、たまらなく、大好きなのだ。
喜ぶ顔を想像する。
驚くかもしれないし、見た瞬間大笑いするかもしれない。
自分へのご褒美として何かを買い求める時も、それはそれで楽しいけれど、あの、『誰か』へ心のベクトルが向いている瞬間は、一年通してそう頻繁にありえないことだから、それってとっても貴重な時間。
スフィアハントへ行く途中、ルカに寄ってもらってプレゼント探し。
そんな、貴重で楽しい瞬間を通り越し、今年も大好きな人皆へ一つずつ。
「これはぁ、ユウナ〜ん!」
「ええっ?!ありがとう!」
大好きな大好きな従兄妹へは、この間ナイショで買いに行った彼女お気に入りのキャンディーの入ったガラス瓶。
「はい、これはパインに」
「・・・『もらう側』になるのにも慣れてきたよ。ありがとう」
すこ〜しだけ愛想に欠ける大好きな剣士さんには、あまり甘くないビターなチョコレート。
付け足しで。
誰かからそういった贈り物を期待できそうにもない組にも、きちんと仲良く一つずつ。
そして、トレーニングが終わり皆よりも遅れて登場したスピラの大スター様にも小さな箱を。
「お?あ、そか。今日バレンタインだったんスね。サンキュ!」
「ああ!もう!髪ぐしゃぐしゃになるでしょお〜!!」
綺麗に結い上げた髪をぐしゃぐしゃとかき回されながら、甘いチョコレートの中にウイスキーが入ってるボンボンを選んだけれど、果たして喜んでくれるだろうか?そんな考えもチラリと過ぎりもしたけれど、自分の贈り物が失敗したところで彼は最愛の女(ひと)からこの世で一番美味しいチョコレートを頂いているのだから文句は言わせないと、心の中で小さく誓う。
「あ、オレこれ好き好き」
嬉しそうに頬張る姿に、今年のミッションも無事に終了!と自分自身に健闘を讃えながら、なんとなく思ったことを言の葉にのせてみた。
「でもさあ、『義理』で『本命』でもないのにお返しが1ヶ月先なんておっかしいと思わない?」
別に、お返しが欲しくて贈っているわけではないのだけれど。
嬉しいと笑ってくれる、そんな姿が照れくさかったから。
『義理』だなんて言っておいて、実は今皆にあげたそのものが『本命』だったりもするというのに。
「お〜。それもそうだ!リュック鋭い!行くか!!」
「へ?は?はああああああああ〜〜〜っ?!」
小さいけれど綺麗な箱にこじんまりと収まっていた5つのボンボンをあっという間に平らげた青年は、壮絶なハニースマイルを武器にリュックを引きずりブリッジを後にする。
「ちょ!ま・・・っ!ユウナ〜〜〜ん!!」
思わず助けを求めた愛しい少女は、彼女の恋人にも負けないくらいの美しい笑顔で優雅に右手を振っているではないか。
「どっ、どこに行くの?!」
リュックはティーダに腕を引っ張られるようなかたちで廊下を歩きながら、それでもこれから先の展開について必死に問うと、
「買い物〜」
軽い口調で返ってきたのはそんな一言で、
「買い物おおおお?!」
「そ、お返し。ユウナは本命だからね、来月あげるけど。リュックは何が欲しいッスか〜?」
『今ならなんでも買ってあげましょう』などと鼻歌まじりに続ける彼の人は、そうだ、ついこの間までビーカネルにバイトに言っていたのだと思い出し、『いい!今はいらない!』と慌てて叫ぶ。
彼の恋人に悪いから、と理由をつけようにも最後に見たユウナの笑顔はきっとこんな展開もあるとわかっていたに他ならなくて、結局『あー』とか『うー』を連発するだけになってしまうのだ。
「ギップルの分、買ってないんだろ〜?拗ねたら鬱陶しいぞぉ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・っな!!」
すべてお見通しの大好きな2人に結託されて
助け舟なんか到底出してはくれなさそうなオネエサマは愉快そうに笑うだけ
ユウナからの義理チョコに浮かれきってる兄はもちろん論外
「よーし!気合い入れて買い物ッスよー!!」
多分、壮絶に面白がっているに違いない太陽の化身に、リュックはこの日初めて特大のため息をついたのだった。
fin
バレンタイン企画でウラをかいてみました。(爆笑)
ティユウイチャイチャバレンタインは大好きなサイトさんでいっぱい見られるので、あえて我が家は
ティーダ+リュックでーす!!(爆笑)
強制的にギップルへのチョコを買わされて、ジョゼに行ったみたいです。(笑)
良かったね、アホ大将。(爆笑)