大切に、大切に、愛(いつく)しみ育てる唯一つのささやかな想い。
世界で一つだけの花
いくら伝えても足りないと思う気持ちがこの胸の中にある。
それは、ふとした瞬間に突然大きく膨れ上がって、この胸の中で大暴れを繰り返し、目指す愛しい人へその想いを言の葉として捧げなければこの身すべてが壊れてしまいそうな、そんな錯覚に陥るほど大きく育ったその想い。
『きっと探し出す』という強い気持ちは、あの日一瞬だけ『もう逢えない』と音を上げた。
もう逢えないのだ、と諦めても尚、心に根付いた小さな芽は枯れることなく『キミ』に向かって育ち続けた。
それは、まるで、太陽に恋焦がれる向日葵のように。
2年という長い長い月日を費やしても『思い出』は色あせず、前を見ても後ろを見てもただそこにあるのは過去だけだった。
紺碧の海は、どこまでも青く澄んで目に痛く。
頬を優しく撫でる風は、過去の優しい思い出ばかりを髣髴とさせて胸に刺さり。
どこまでも広がる青い青い空は、彼の瞳の色だと思い知らされて切なくて。
そう、自分を取り巻くすべての風景は―――彼だった。
『奇跡』だと言われても構わない。
けれど、『奇跡』だとは思わない。
繋ぎとめ
手繰り寄せて
その存在を抱きしめたのは他でもない、自分だから。
「ユ〜ウナ?どうしたッスか?ぼーっとしてる」
ああ。
その笑顔が私を照らす唯一の光。
「キミがね、帰ってきた日のこと思い出してた」
こんなにも素直に『あの日』のことを語れる自分がいるとは思わずに。
「ああ、あの日かあ・・・ユウナめちゃくちゃ可愛かったから焦ったっつーの」
少しだけはにかんで、笑う。
照れてる時は小さく俯く。
一つ一つ、思い出を辿る様にキミの癖をこの身に映した。
「キミの事、大事にするからね?」
思わず零れ出た本心に目の前でキミが固まったけど。
「ユウナ・・・それ、オレのセリフだと思う・・・」
そうかな?
だって、本当に本当に大切なの。
あの日芽吹いた小さな芽は、今こんなにも大きく育って大輪の花を咲かせているよ?
「いいの。だってキミは私だけの大切な人なんだから」
少しだけ驚いて
少しだけはにかんで
少しだけ俯いて人差し指で頬を掻く
「キス、してもいいッスか?」
呟きは眩しいほどの笑顔と共に
「ティーダ」
あの日呼べなかったキミの名前
「うん?」
私が呼びかけるよりも先にいつも振り返って待っていてくれたキミの返事
「大好き」
「オレも」
大切にするよ、キミの事。
この胸に咲いた花はたった一つのものだから。
他の花はいらないの。
この花でないと意味がない。
だから、今日も捧げるよ?
『愛している』と胸に咲く『キミ』に向けて――――。
fin