こんなにも簡単

 

あの時

自分の愚かさ加減にもの凄く情けなくなって

あの時

キミの瞳を見つめ返すことが怖くて

あの時

飛び立つキミを、ただ見送るしか出来なくて

ねぇ?

ずっと後悔してた

『キミ』を守ること以外、私がするべきことはなかったというのに―――。

 

「・・・ユウナ?」

朝日の気配とキミの匂い。
まだ、ゆらゆらと眠っていたいけどキミの声に起こされるのって素敵。

「・・・ん?・・・おはよ」

思うように声が出ない。
掠れて、ヘンな声。

「おはようじゃないッスよ。怖い夢でも見た?」

私を覗き込む大好きな顔は、今朝に限って曇り空。

怖い夢?

どうして?

寝ぼけ眼でそう尋ねたら

『だって寝ながら泣いてるから』

キミは呆れたように笑って私の頬を撫で、その動きに伴って湿った感触。

「・・・ほんとだ・・・なんでかな?」

「オレが聞きたいッスよ」

瞼にそっと押し当てられた唇に、消し飛びかけた夢の欠片。

 

「・・・あ」

 

「うん?」

「・・・思い出した、かな?」

夢。

あの時の夢。

自分の恋心に蓋をして純白のドレスに袖を通した

キミを怒らせて

キミを傷つけて

キミの瞳を見ることが出来なくて

それでも

それでも

キミの前で涙を流して

 

「ね、もうちょっと寝てもいい?」

「・・・珍しいこと言うッスね?」

キミの少しだけ驚いたような顔。
あのね、違うの。

「キミも一緒に・・・って、だめ?」

「了解」

怖い夢、だったのかもしれない。

今は、こうしてお願いすればすぐに愛しい温もりが手に入ることが奇跡のようで。

抱きしめて

鼓動を確認して

視線を合わせて

そして、独りで確認するの

一人じゃない一人じゃない一人じゃない一人じゃない・・・独りに、しない

 

「初めて、キミとキスした時の夢をみてたっす」

 

あのね?

あのね?

キスした時も

こっそり手を繋いで歩いた時も

最期の最期まで

私、キミに『愛してる』って言えなかったって、夢を見て気がついたの。

キミの笑顔に

キミの手に

キミの、背中に

言いたくて言いたくて言いたくて

「ごめん、ね?」

「どうして?」

「どうしても」

見上げた先には眩しいくらいに輝く笑顔。

「いいッスよ?だってさ、今はこうやってユウナとベタベタしてられるし?」

「一日中?」

「そうそう、一日中ユウナにエッチなことしても怒られな〜い!」

「ええええっ?!きゃあん!」

 

ティーダ、ティーダ、愛してる

今ならこんなにも簡単で、そして素晴らしい日々。

fin

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