今更だな、と思うんだけど。
イマサラな気持ちで
再会して、想いを通じ合わせて、お互いの肌の温もりを呆れるほどに貪っておきながら、『今更』かな?と思うけれど、でもやっぱり聞いてみたいのは『彼女の今まで』だ。
それはありきたりな『日常』などというものではなくて、もっと、自己中心的な、身勝手な考えで、もっとたくさん、直接的に『あなただけだった』と言わしめたいだけだろう。
好きだと言ってくれるだけでいいと思う反面、それでもまだ足りないのだと渇望する気持ちもあって、なんだ変わったのは自分の方じゃないか、と苦笑した。
「ユ〜ウナ?」
目の前で編み物に没頭している愛しい人の名前を紡ぐ。
「なあに?」
どんなに忙しくても、必ずこちらの瞳を捕らえて愛らしく微笑んでくれる。
「なんでもないって言ったら怒る?」
「怒らないよ、キミってばいつもそうだもん」
楽しげな二色の瞳はまた編み目を追い始めた。
規則正しく動かされる指の先から、ユウナの性格そのままに同じ大きさの目が並ぶ。「なあなあ、それ、オレの?」
グレーの毛糸。
聞かなくてもわかるけど、少し甘えてそう聞いた。「うん。セーター。上手に出来たら着てね?」
「上手でなくても着るッス」
間髪おかずに繰り出される返事に、ユウナはうふふ、と笑うだけだ。
なあ、ユウナ?
オレは君の想いに間に合ったかな?
あの、暖かいのか寒いのか、寂しいのか幸せなのか、いまだによくわからないあの世界からオレを引き戻してくれたのはユウナだけど。
それでも。
いつだってユウナの傍に在りたい。
それだけは忘れたくない。
忘れるもんかと思ってた。
「ユ〜ウナ?」
「なあに〜?」
「だっこさせて」
笑顔で両手を広げて
「もう、セーター出来るの遅くなるっすよ?」
ため息混じりに言うくせに、それでもお願いを聞いてくれるユウナは凄いと思う。
引き寄せて
抱きしめて
温もりを逃がさないように腕の中に閉じ込めて
「ユウナってさ、オレの居ない間って・・・・誰か好きになりかけたりとか、した?」
『今更』かな?って思うけど。
ユウナの細い腕がするりと首に回されて、優しい手つきでオレの髪を梳く。
「『キミ』以外、誰を好きになるっていうの?」
耳元で囁かれた声は酷く甘くて目の前が白くなったけど、それだけでは終わらない強烈な攻撃が待っていたなんて、誰か知っていたなら教えてよ。
「こういうことは、キミとしか、したくない」
呟きの後、重ねられたユウナの唇は先刻の囁く声より甘く、自分だけ幸せにしてもらってるみたいで申し訳なかったから『身体で返そうかな?』なんて思ったりして。
一応、間に合ったみたい、かな?
そんな風に自己完結してこっそり笑ったのは、ユウナには内緒。
fin