なんだか、凄く『そう』したくなったんだ。君の笑顔が見たいから。

 

秘密

 

「アルバイトがしたいって?!むがっ!」

「し〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 緑のグルグル眼をこれ以上はない、というくらいに見開いたリュックが大声をあげ、ティーダは必死に黙らそうと慌ててその口を押さえる。
 共同居住区の2階の片隅へ、ユウナに見つからないようにリュックだけを呼び出し相談を持ちかけたのだ。
 物陰にしゃがみこみヒソヒソとしゃべっている様子は、怪しいことこの上ない。

 

「出来るだけ短期で!・・・ないッスか?」

「ないこともないけどぉ。・・・どおして?」

 

 ティーダがスピラへ還ってきてから、すでに半月が経とうとしている。
 カモメ団へ入り、ビサイド・オーラカとも正式契約をした彼の『アルバイトがしたい』という理由がさっぱりわからない。
 しかも『ユウナには内緒』らしいというところがさらに胡散臭い。

 

「理由は?」

「う・・・えと、ユウナに何かプレゼントがしたいかな、と」

「お金なら貸したげるよ〜?」

「いや、ダメ。それじゃ意味ないッス」

 

 自分の申し出をキッパリと断ったティーダが、いつになく真剣な眼差しでこちらを見ているのがなんとなく可笑しくなって、リュックは小さく吹き出してしまった。
 どこまで行っても『ユウナ至上主義』なのだ。
 ・・・それは自分もそうなのだけれども。

 

 

「ユウナんには内緒にしたい、と」

「したいッス」

「でも、あんまり離れていたくも、ない」

「ないッス」

「よっしゃ、わかった。リュック様にまっかせなさ〜い!」

 

 

 ドン!と胸を叩いてふんぞり返るリュックに、ティーダは思わず合掌する。
 合わせた手の横からちらり、と青の瞳を覘かせて

「あとさ、ユウナが好きそうな物・・・知ってる?」

 そうおずおずと尋ねてくるティーダに にんまりと笑ったアルベドの少女が、一週間のビーカネル砂漠行きを取り付けたのは この一時間後のことだった。
 短期間でお金になる。その願いそのままに、おあつらえ向きのその仕事が、どんなに過酷で忙しいものなのかを彼が思い知るのはもう少し先の話。

fin

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