あのね?えっと、いつも思ってるんだけどね?

 

 心の温度

 

 『好きだよ』

 『愛してるよ』

 『ユウナ以外いらないもん、オレ』

 

 臆面もなく繰り出される彼からの愛の言葉。

 伝えられるたびに嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったいような、うまく言い表せない感情で心の中がいっぱいになる。

 それは決して嫌なものではなく、最近では、むしろもっと言って欲しいと思うワガママな自分がいたりもすることに少々呆れてしまう時もあるのだけれど。

 

 『ユウナ?』

 

 自分の名を最愛の人が呼んでくれる。

 ただそれだけのことで、こんなにも自分の名前が愛しいと感じるなんて思わなかった。

 

 『可愛い』

 

 見つめ合う度に笑顔でそう言ってくれる彼に、恥ずかしくて、つい可愛くないことも言ってしまうけれど、本心はいつでも可愛らしい自分でありたいと思う。

 

 

 彼の姿を視界に捕らえるたびに

 

 

 彼の声を耳にするたびに

 

 

 『愛してるよ』と囁かれるたびに

 

 

 ユウナは自分の中の心の温度が急激にあがっていくのがわかる。

 熱くなった心から愛しさや幸せが溢れてきて、全身を包み込んでくれるたびに、『自分も彼に気持ちを伝えたい』と真剣に思う。

 彼からもらう温かさ以上に、自分だって彼を温かくしてあげたい。

 けれど、情けない自分は頬を赤らめるばかりで思うように言の葉を紡いではくれないのだ。

 どうにかしてこの気持ちを彼に伝えたいと思っているうちに、あの魅惑的とも言える青の瞳に捕らえられ 結局はなし崩しのまま白い波の中へと運ばれてしまう。

 「あ!あの!!待って待って!!ティーダ?!」

 「うぇ?!ユウナ、もしかして生理中?・・・もうちょっと先っスよね、確か」

 ここ最近ではすっかり『ユウナの身体の予定』を看破しつつある少しだけ困った恋人は、突然の制止の声に驚いたような顔を覗かせる。

 『可愛い』『スキ』を連発した挙句に、さっさと愛しい少女をベッドに運び込み、ユウナの衣服をそれはもう嬉しそうに捲り上げたその時の『待って』だった。
 ティーダは露わになった愛すべき双丘へ少しだけ名残惜しげな視線を投げかけると、身体をずらしユウナの顔を覗き込むようにして『どうかした?』と尋ねた。

 「あ、えと、その・・・ね?」

 「うん?」

 「いつも、思ってるんだけど、ね?」

 「・・・何か、悪いこと?」

 「・・・っち、違う違う!」

 耳まで赤く染めてごにょごにょと言いよどんでいるユウナに、ティーダは凄まじく困惑した表情を見せ悩むオッドアイを更に覗き込んだ。

 『ああ、お願いだからそれ以上、その綺麗な顔を近づけないで』

 ユウナはそんなどうしようもないお願いを心の中で呟きながら、それでも今言わなければ、言いたいのだ、と挫けそうな自分を叱責する。

 「ユ〜ウナ?」

 「う、うん!あのね?!あの・・・、私・・・」

 「うん」

 「・・・キミのこと・・・あの・・・大好き・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・ん。」

 滅多に聞かせてもらえないユウナの告白に、たっぷり30秒は固まっていたであろう黄金の髪の青年は、『もの凄くがんばって捻り出しました』といった感じの間の抜けた返事を返すのがやっとだった。

 「あの、ね?いつも、キミに言いたいんだけど、思うように言えなくて・・・ごめんね?」

 眼下で苦笑まじりにそう言うユウナを、ティーダは呆気にとられたように眺めながら、こんなところが可愛らしくて仕方がないのだ、と心の中で盛大にため息をついてみる。

 わかってないから、困る。

 彼女のその存在がどんなに愛らしいのか、まったくもってわかっていない。

 本当ならば、ユウナの可愛らしい告白に優しい笑顔の一つも差し上げ、柔らかい栗色の髪を撫でてあげたい。

 

 けれど。

 

 「ユウナ、ユウナ?そういう可愛いことする人には、もう我慢しないッスよ、オレ」

 「え?!きゃあ?!」

 

 熱のこもった長い口づけの後、『なんか、すっげぇ幸せッス』と照れたように呟いたティーダの笑顔に、ユウナは少しだけ恥ずかしそうに微笑んで、消え入りそうな声でもう一度、『愛してる』と囁いたのだった。

fin

臆面も無く「生理」とか言えます、うちのティーダ。(笑)

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