『信じられない』なんて言葉は、使いたくないの。

 2年前の『あの時』から、ずっと『信じて』生きてきたから・・・・・・・・。

 

 the truth

 

 その日のビサイドはお祭りムード一色、といった感じだった。

 昼間から始まったそれは、太陽が姿を消し星が瞬きだした今でも衰えることなく続いている。

 まずは、ユウナがビサイドへ帰ってきたこと。

 本日ルカでは、青年同盟・新エボン党・マキナ派が事実上『和解』をし、盛大な式典が催されていた。
 そこにいたるまでの経緯に、ユウナたち『カモメ団』が深く関わっていたのは周知の事実で、その最大の功労者であるところのユウナにも演説の依頼があったのだが、彼女はそれを辞退し、ビサイドへ向かうことを決めていた。
 通信スフィアで帰還の知らせを受けたワッカをはじめとする島の住民たちは、ユウナを迎えるべく海岸へと向かった。

 

 そこで、人々が見た光景。

 

 それは、ユウナが起こした『奇跡』そのもの−−−−−−。

 

 2年前(正確にはもう3年近く前のことだが)、『永遠のナギ節』と引き換えるようにして忽然と姿を消した青年が一人。
 すぐに忘れてしまうというには思い出は鮮明で、彼の残していった数々の彩はスピラのそこかしこへと飛散していた。

 ただ、『彼』だけが存在しないというだけで。

 その『伝説のガード』と呼ばれるようになった青年が、愛すべき少女と抱き合って立っていたのだ。

 

 太陽の光に反射してキラキラと輝く金の髪。

 

 ビサイドの海と同じ色をした双眸。

 

 ・・・・・・・・ティーダ・・・・・・・・・。

 

 2年以上を経て、ようやくユウナが手に入れた『永遠のナギ節』に、島の住民全員が心からの祝福と感謝を海へと捧げたのだった。

 

 

 

 

 「ユ〜〜〜ウ〜〜〜ナ〜〜〜〜ん!」

 

 ちょうど自分のいる場所の逆の方角から、リュックが駆け寄ってきた。

 ユウナは少しだけ疲れた顔で、それでもリュックに優しく笑いかける。

 

 「あっれぇ?!捕まってたんじゃなかったの?!」

 「たった今解放されたんだ」

 ユウナの後ろから現れたパインは、呆れているという感情を隠すことなくぶっきらぼうにリュックに告げた。
 正確には、「解放された」というよりも「パインに助けてもらった」のほうが正しい。
 ティーダの出現も喜ばしいことではあったが、ビサイドの住民(主に年寄りだが)は、やはりユウナの話が聞きたいらしく、今の今まで放してはくれなかったのだ。

 「アイツも今、ワッカから解放されたよ」

 ティーダの帰還を、ユウナ以外でそれはそれは喜んだのはワッカだろう。

 いまや一児の父親になり、少しだけ落ち着きを見せたものの、以前の旅のときにティーダのことを『実の弟』のごとく可愛がっていたのだ。
 討伐隊に入り、すぐに戦死してしまった彼の弟、チャップにティーダが似ていたということもある。
 『弟』との2度の別れを経験し、もう再び逢えないであろうと諦めていたところに、奇跡が舞い降りたのだ。
 『浮かれるな』というほうが、どだい無理な話なわけで・・・・。

 

 「ユウナん。行ってきなよ。アイツあっちで待ってるよ?」

 リュックが嬉しそうにユウナにティーダがいる方向を指し示す。

 「・・・・いいかな・・・・?」

 「いいに決まってるだろう?早く行きな」

 「ありがとう!」

 

 パインに背中を押され、自然早歩きになった。
 正直、今日ばかりは島の皆が恨めしかった。
 本音を言えば、彼と一分、一秒だって離れていたくない。
 今も、まばたきするのさえ怖いくらいだ。

 喧騒の中わずかに聞こえてくる彼の声に少しだけ安心したが、早く真実であると強く感じたかった。

 

 「ユウナっ!こっちこっち!!」

 

 お祭り騒ぎをやめようとしないにぎやかな場所から、少し離れたところでティーダが手招きしている。

 「ごめん!なかなか抜けられなくって・・・」

 駆け寄って思わず抱きつく。
 まるで、昼間飛空挺から飛び降り、彼にそうした時そのままに。
 お互いの体温を確かめ合って、一息つくとティーダが声を潜めてユウナに耳打ちしてきた。

 「2人っきりになれるところに行かない?」

 否は、ない。
 同時に悪戯っぽく笑って、喧騒を避けるようにして村から脱出した。

 

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